2012年4月11日水曜日

本質は細部に宿る

先月発行されたうちの学部の紀要に学生との論文を発表した(参考ブログ:視覚運動制御 accepted)。学生がファーストで僕がラストです。「ファースト」「ラスト」って何かというと、論文に掲載される執筆者の名前順です。面倒を厭わず全部書くなら「first author」「last author」となります。 今回は執筆者は2人(学生と僕)だけなので、ラストは「second author」でもあるわけですね。

どうしてこんな順番にこだわるのかと言うと、この順番がその論文に対するそれぞれの執筆者の貢献度や役割を表すからなんです。今回のケースでは、読む人が読めば誰(どちら)が何をしたかはかなり明確に分かると思うのですが、念のため「代表者」の連絡先として僕のメールアドレスを論文1ページ目下端に記載しておきました。英語なので「Corresponding author: toshis@reha.kobegakuin.ac.jp」とあります。「この論文に関するお問い合わせはこのメールアドレスにお送り下さい」との意味ですね。

文科系のことはよく知りませんが、理系では「研究室(ラボ)」の主宰者(principle investigator。よく「PI」と略します)がいて、そのPIの大きなテーマ(research program)の中で、学生なりポスドクが小さなテーマを追求していきます。彼ら一人一人の研究のテーマは違えど、総体として見た場合にはそのラボの大きなテーマを追求できるようプログラムされているわけです。僕の研究室だと「運動学習」と「習慣形成」が現時点での大きなテーマに相当し、僕の学生や共同研究者らが行う個々の研究は、この傘の中で追求される小さなテーマとなります。

でまあ、ここまでが今日のブログの前置きなんですが、先日、上の紀要の別刷(冊子に掲載された個々の論文の抜刷りで、普通50部ほどが無料でその論文の執筆者に配布されます)を、窓口の学部長室に取りに行ったところ、事務方さんはそれを全て学生の実家宛に郵送したと言う。。。

「あのう、ここに連絡先書いてるんですけど。。。」

(1ページ目下端を指差す)

どうしてこういうことが起こるのだろう。お茶を入れ、椅子に座り直してちょっと考えてみた。「連絡先」が英語で書かれていたからかな? いや、でも同じ日本であっても理学部や医学部でこんなことが起こるとは考えられない。レベルの差? まあ、ひょっとするとそうなのかもしれないが、うちの事務方さんのレベルは決して低いわけではない。

たぶん、論文に「連絡先」が記載されているなんていう発想が彼女たちにはないんだろう。だからたぶんそれをチェックしてもいないんだろう。でもこれは無理もないことである。うちの教員にもそんな発想はないわけだから。。。そしてここでもう一歩踏み込んで考えてみると、上の「ラボ」という概念もここには存在しないから今回のようなことがサラッと起きてしまうのだと思う。つまり、たとえその論文に連絡先が記載されていなくとも、それが「ラボの研究成果」という認識があれば、別刷を郵便ポストに投げ込む前に、その研究室の責任者にその取り扱いについて問合せがあるはずである。。。補足だが、うちの部署は「理系」にも関わらず、研究室のことを「ラボ」ではなく「ゼミ」と呼ぶ。

今日のお話は読む人によってはもの凄く些事に聞こえる話だと思うし、研究室のことを「ゼミ」と呼ぶ理系学部があってもそれはそれで画期的なことなのかもしれないが、僕は

「ものごとの本質は細部に現れる」

と思うわけです。。。

肝心の別刷は改めて刷って僕に渡してくれるということだが、さて、これもどうなることやら。。。

0 件のコメント:

コメントを投稿