3年生の研究論の課題で「研究批評」というものがある。どういう課題かというと研究を批評するんです。←そのまんま^^。で、学生から、「書き方わかりません。。。」という質問というかコメントというか苦情というか、そういう声をたびたび頂いているのだが、昨日、何人かの学生にその時思い付いたたとえ話をした。そしてそれが案外好評だったので、それをみんなとシェアしたいと思う。
それはどういう話だったかというと、誰かに知り合いを紹介するように論文を紹介して下さいというものだった。人を紹介する時には、いろんなレベルの紹介の仕方があると思うが、命いっぱい紹介しなくてはならないような場合には、まずはその人がどんな人なのかを客観的な事実を挙げて描いていくことになるだろう。
たとえば、◯◯会社の課長をされてて、10年以上営業畑でのキャリアがあって、これまでに受注した億越えの大型案件は30件を超えるみたいな、名刺や履歴書のハイライトみたいなものですね。
そしてその次のステップとして、名刺や履歴書では伺い知れない、その人の実績の背後にある「成功の理由」や「成功の価値」について描いていくわけです。つまり、この人はコレコレこういうことを日々実践しているから、今の成功があるんだとか、これまでこの人が成し遂げてきたことは、社会にとってこれだけの価値があるんだよ、といったことを、その人のことや、その人の仕事に全く予備知識がない人にも自然に分かる形で描写するわけです。
場合によっては、美辞麗句、褒め言葉だけでは正確にその人のことを表現しきれないこともあるでしょう。誰からも受け入れられる「完璧な人間」なんていないと思います。その時にはその人の不足していることも書き記す必要が出てきます。「ボロクソに罵倒する」というのも一つのやり方かも知れないし、やんわりとそれとなく聞き手に伝わるように皮肉を言うという手もあるかもしれません。
でも無難なのは、「その人のこれからの課題」という形で、アナリティカル(理性的、分析的)に描くことではないかと思います。そして、今後、こうやっていけばさらに魅力的な、限りなく100%に近い人物になるだろうという建設的な提案も加えるのです。
こういうたとえ話は「アナロジー」と言って、物事の本質・原理を理解する一つのやり方なのですが、上の人物紹介の「人物」のところを「論文」に置き換えて、今回の課題に取り組んでみて下さい。本質・原理を理解したからと言って、すぐに上手に出来るようになるわけではありませんが、まずは何をしなければならないかを理解することは重要なことだと思います。
何かを評価しそれを人に伝えるという行為は、日常いろんな人がいろんな場面でしています。上に出てきた「営業・セールス」ということであれば、売ろうとしている物やサービスの価値を理解し、それを人に伝えるということになりますし、研究者であれば、論文を書く際に、自分の仕事の価値をよく理解した上で、その価値を読み手に解説・アピールしていくことが必要になります。皆さんが専門とする理学療法では、患者さんの状態を評価し、それを患者さんに伝え、どうすれば患者さんが今よりも良くなるのか提案していくわけですね。
単位を取るための義務というだけではなく、こんなことも考えながら、今回の課題に取り組んで頂ければと思います。
ちなみに僕が現在配信しているメールマガジン「脳とリハビリ」も、言ってみれば、「研究批評」なんですね。取り上げる論文に何が書いてあるのかをまとめた上で、僕なりの解釈を加えていく。単なる「紹介」「受売り」「横流し」に終わるのではなく、対象物に自分の言葉で色を加えていくわけです。
大袈裟に言えば、これまで誰も考えたことがなかったような新たな解釈の可能性を切り開いて行くことが、批評のあるべき姿と言えるかもしれません。
理学療法学専攻3回の出口綾香です。研究論文について質問があるのですが、ゼミの研究で実際に得られたグラフを使用しようと思うのですが、グラフ内にマーカーで印をつけています。それを使用しても良いですか?
返信削除マーカーがどのようなものか分からないので、推測でお答えしますが、もしそれが「書き込み」「メモ」の類いで、簡単に外せるなら外して下さい(オリジナルの電子ファイルがあれば、それを使用して下さい)。
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