慶応大の岡野先生によるiPS細胞を使った再生医療のお話では、脊髄損傷を伴うサルの運動機能が細胞移植によって劇的に回復していました。もちろん移植後の運動療法も機能回復に必要ではあるんでしょうが、この手の話の主役はやはり誰が見てもiPSですよね。たとえば運動療法における自動介助運動のやり方を工夫してもあそこまでの回復は得られないでしょうから、やっぱ細胞工学の威力ってスゴいと思います。ひょっとして、分子生物学ってリハビリに関係ないって思ってませんでした? 大アリだと思います。
続いて登壇された東大の岡部先生の話はシナプスに関するものでしたが、脳内の神経ネットワークが発達の過程でどのように形成されていくのか、学習に伴うニューロ・ネットワークの形成と重ねながら聞いていました。シナプスって半日あれば出来ちゃうんですね。いやMITでお世話になっていたO本さんの話では半日どころか1時間もあれば出来るって言ってたな。ま、それが成熟したシナプスになるにはもっと時間はかかるのだろうけど、それにしてもですね、そんなに早くシナプスが出来るのなら、僕たちはもっといろんなことを素早く学んだりできるはずだと思いません?たぶんシナプスを素早く作るだけではダメなんでしょうね。作ってはボツ、作ってはボツを繰り返すなかで完成形を見いだしていくんだろうと思います。僕たちが試行錯誤をするように、脳たちも試行錯誤してるんでしょう、おそらく。。。
ATRの川人先生の話は、僕的には一番興味深かったですかね。ま、どの先生の話も良かったんだけど、人間の認知・行動レベルの話が中心になっていて、僕がこれから学生や臨床のセラピストと研究をして行く上で特に参考になりました。論文ではこれまで何度もそのお名前("Kawato") は拝見していたんですが、トークを聞くのは今回が初めてでした。難解な内容ではあるんですが、話がとても整理されていて、分かりやすいというか、こう、クールでスマートなんですよね。で、それでいて、ご自身も随所で言葉にされていた通り、めちゃめちゃ野心的で、力強くもあります。何て言うか、こう、ギラギラしたところのない品の良い野望とでも言えば良いんでしょうか。そんな清々しさと力強さを感じるトークでした。最後の質疑応答で、バックグラウンドが異なる研究者が一緒に仕事をする上で何が最も大切かといった話になったんですが、
「何を面白いと思うか」
が一番大切だって言われてました。確かに面白いと思うものが互いに違えば目指すゴールも自ずと異なって来るわけで、運良くコラボを始めることが出来たとしても、どこかで必ず袂を分かつことになるのでしょう。価値観の共有。コミュニケーションの前提でもあり、ゴールでもあると思います。
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