2016年9月1日木曜日

豊かな生活

Facebook に写真を幾つか投稿しましたが、この週明けは飛騨高山を訪れました。今回計画を立てるまで知らなかったのですが、岐阜県と言っても、もう少し行くと富山なんですね。でも神戸の自宅からだと高速道路が延々と繋がっていて、目的地まで辿り着くまでほぼ信号待ちすることなかったです。制限速度を守れば 350 kmを4時間30分といったところでしょうか。

今回の旅のお目当ては同地にあるフィン・ユール(Finn Juhl)邸。ヤコブセン、ウェグナーらと共に20世紀にデンマークで活躍した家具デザイナーです。特にペリカンチェアなど椅子のデザインが有名で、日本でも北欧家具に詳しい人なら知らない人はいないはず。僕自身は日本に帰って来た時(2007年)に何も家財がなく、しばらくの間、休みの日はいつも家具屋に入り浸っていたのですが、その頃にこの手のことをお勉強したんですね^^

知ればいろいろその奥深さが分かってくるものですが、はっきり言えることはデンマーク人はイタリア人とは違うということ。。。イタリアはやはり南欧ですから陽光キラキラの世界で実用性より見た目が大事。座ると痛いアクリルの椅子でもお構いなしですが、デンマークは視覚だけではなく座り心地も追求した木の温もりを感じる世界です。ま、どちらも日本にはない独特な曲線美があり個人的には両方好きですけど、デンマークの方が畳の部屋など和風建築に合いますね。

高山にあるFJ邸はデンマークにある現物のレプリカで、各方面からの出資を基に2012年に建てられたそうです(詳しくはこちら)。これを管理する株式会社キタニジャパンの方に当日は案内頂きましたが、この会社自体がフィン・ユール設計の家具を製作・販売されていて、お話を聞く限りでは、会社の事業の一環としてこのプロジェクトを企画されたようです。ガイドの方もデンマーク家具の大ファンでしたが、多額の出資を募りこだわりのモデルハウスを作るとは、なかなかの思い入れですね。

どういう経緯で高山にあるこの家具工房がフィン・ユールと繋がったのか。興味があり聞いてみたのですが、創業者の方が本業とは全く別に福祉に関心があったとのこと。そして福祉先進国であるデンマークの福祉施設を訪れた際に高齢者や障害を持った人たちが自分の好きな家具を自室に持ち込み楽しそうにしていたのを目撃したことが始まりのようです。なんだか視覚や座り心地といった脳科学だけではなく、リハビリテーションにも繋がって来ましたね^^

そこからフィン・ユールに辿り着き、家具事業を起こし、アートミュージアム(FJ邸レプリカ)を建設してライフスタイル(暮らし方)を提案する。いろんな繋がり方があるというか、すべては繋がっているというか、福祉を起点に「豊かな生活」の創造が始まるというのは興味深いです。

日本も取りあえずは豊かな国で、GDPとかメダルの数とか、デンマークよりかなり上を行くんじゃないかと思うんだけど、日本で言う「福祉」って「介護」という言葉に代表されるように過酷な現場を連想する人も多いんじゃないでしょうか。一人一人の生活の質(暮らし方)で見た時に本当に豊かなのかどうか。冗談みたいな話だけど、日本の場合、スマホ世代が歳を取り施設に入所した時に、そこでの唯一の楽しみが「ポケモン探し」なんてことも十分に考えられるんじゃないかと思う。。。

日本にも職人文化があり、ディテールを仕上げる技があると思うんですが、家具のデザインの美しさという点では、全体としてデンマークなどのヨーロッパ勢に引けを取っているように思いますね。あと一歩のこだわりの違いというか、削ぎ落としの違いというか、車のデザインでも、たとえばアルファロメオの流線形とか、日本車は今もって真似しきれてないですよね。あと一歩なんでしょうけど、これが本物とフェイクをはっきり分ける大きな一歩なんでしょう。

今回の旅から、我が家のこれからのインテリアプランに活かせそうなアイデアも幾つか頂戴しました。ちなみにキタニジャパンでは、高齢の方や障害を持った方のためのオリジナル家具の製作・販売も行っているようですよ。宿泊した旅館もこれまた長いブログが書けるほど心動きましたが、こちらはまたいつか時間のある時に。飛騨高山。また車飛ばして行ってみたいですね。

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